不動産投資の修繕費はいくら積み立てるべきか?計算方法と実例【経理マン大家の3年間】

不動産投資の修繕費積立の目安と計算方法を3年の実体験をもとに解説。築年数・構造別の積立額の目安、積立不足のリスク、実際の修繕費発生事例も公開します。

修繕費積立維持費サラリーマン大家キャッシュフロー

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「修繕費って、毎月どれくらい積み立てればいいですか?」

3年前、僕が不動産投資を始めた頃、最も答えが曖昧だった質問がこれでした。

セミナーでは「家賃の10%くらいを目安に」とサラッと言われる。書籍には「築年数が古いほど多めに」と書いてある。でも、具体的にどう計算すればいいのか、誰も丁寧に教えてくれませんでした。

経理職として数字を扱うことには慣れている僕でも、不動産の修繕費積立は最初は感覚でしかわかりませんでした——そして、その感覚の甘さを実際の出費で思い知ることになったのです。

この記事では、都内2戸・埼玉1戸を管理してきた3年間の実体験をもとに、「修繕費の積み立て額をどう計算するか」を具体的にお伝えします。

物件のメンテナンスイメージ


修繕費の積み立てを怠ると何が起きるか

まず、「なぜ積み立てが必要か」から話しましょう。

不動産投資を始めたばかりの頃、僕はこう考えていました。「管理費と修繕積立金はマンション側が取ってくれているんだから、自分で別途積み立てる必要はないんじゃないか」と。

これは半分正解で、半分大きな間違いでした。

マンション側の修繕積立金では足りない部分がある

区分マンション(ワンルーム投資)の場合、管理組合が徴収する「修繕積立金」は、あくまで共用部分の大規模修繕(外壁、屋上、エレベーター等)に使われます。

専有部分——つまりあなたの部屋の中——の修繕費は、オーナーである自分が全額負担します。

具体的に言うと、こんな費用がかかります。

修繕項目発生タイミング費用目安
クロス(壁紙)張り替え退去時(6〜10年ごと)6〜15万円
フローリング補修退去時(傷・汚れによる)3〜10万円
エアコン交換10〜15年ごと10〜20万円
給湯器交換10〜15年ごと10〜20万円
洗面台・浴室補修退去時〜15年ごと5〜20万円
水回りパッキン交換5〜10年ごと2〜5万円
玄関ドア錠前交換退去時1〜3万円

これらが「突然発生する」のが不動産経営の現実です。

積み立てが不足している状態でエアコンと給湯器が同時に壊れると、手元から一気に30〜40万円が消えます。

僕の場合、1戸目の物件を購入して8ヶ月目に洗濯機の排水トラブルが発生し、配管修繕で約8万円の出費がありました(購入前に配管を確認しなかった僕の失敗です)。積み立てをしていなかったため、生活費から捻出することになり、精神的に焦りました。

購入前の物件チェックについては、物件内見で必ず確認すべき20のポイントにまとめています。参考にしてください。


修繕費積立の目安:築年数・構造別

では、どれくらい積み立てればいいのか。一般的な目安をまとめます。

基本の考え方:「年間家賃の○%」アプローチ

最もシンプルな計算式は、「年間家賃収入の一定割合を毎月積み立てる」方法です。

築年数・物件タイプ積立目安(年間家賃比)具体例(月家賃8万円の場合)
新築〜築10年5〜8%月4,000〜6,400円
築10〜20年8〜12%月6,400〜9,600円
築20〜30年12〜15%月9,600〜12,000円
築30年以上15〜20%月12,000〜16,000円

ポイントは、築年数が古いほど積立額を増やすこと。設備が古くなると、いつ何が壊れてもおかしくない状態になります。

実質利回りの計算に修繕費を正確に組み込む方法については、利回り計算の教科書で詳しく解説しています。修繕費を軽く見ていると、表面利回りと実質利回りの差が想定以上に広がります。

構造別の考慮点

木造・軽量鉄骨と、RC(鉄筋コンクリート)では、劣化の速度が違います。

RC造(区分マンション)の特徴

  • 建物の耐久性が高く、共用部の大規模修繕は管理組合が対応
  • ただし、専有部の水回り・設備は経年劣化する
  • 積立目安は「年間家賃の8〜12%」が現実的

木造アパートの特徴

  • 一棟所有の場合、外壁・屋根・共用廊下すべてオーナー負担
  • 修繕コストが区分より格段に高い
  • 積立目安は「年間家賃の12〜20%」、築古物件はそれ以上

築古物件・木造アパートへの投資判断については、築古アパート投資の可能性と落とし穴も合わせてご覧ください。


僕が実践している修繕費積立の計算方法

「目安はわかった。でも、具体的にどうやって計算するの?」

僕が実践しているのは、「大型修繕の交換サイクルから逆算する」方法です。経理の仕事で費用計画を立てることに慣れている僕には、この方法が最もしっくりきました。

ステップ1: 主要設備の交換サイクルを書き出す

まず、専有部内の主要設備を一覧にします。

設備想定寿命交換費用目安年間積立額(÷年数)
エアコン12年15万円12,500円/年
給湯器12年15万円12,500円/年
洗面台・水栓15年10万円6,667円/年
クロス張り替え8年10万円12,500円/年
フローリング補修10年6万円6,000円/年
小修繕(パッキン等)随時年3万円30,000円/年
合計約80,167円/年

月換算で約6,700円。月家賃8万円の物件に対して、約8.4%の積立という計算になります。

ステップ2: 退去時費用も見込む

退去時には、入居者の過失に依らない「自然損耗」の修繕費もかかります(国土交通省のガイドラインに基づくオーナー負担分)。

入居年数・物件クオリティにもよりますが、退去1回あたり5〜15万円は見込んでおくべきです。平均入居期間3〜4年で計算すると、年間1.5〜4万円の積立が必要になります。

ステップ3: バッファを加える

計算通りに行かないのが修繕です。設備が想定より早く壊れることも、複数が重なることもあります。

計算した積立額の20〜30%増しを実際の積立額として設定するのが安全です。

まとめ:僕の3戸の積立設定(実例)

物件家賃積立額/月積立率
都内・築12年RC85,000円7,000円8.2%
都内・築18年RC72,000円8,000円11.1%
埼玉・築22年RC65,000円9,000円13.8%

築年数が古いほど積立率を高く設定しています。毎月の修繕積立として、3戸合計で2.4万円を別口座に移しています。

購入前の初期費用と資金計画については、不動産投資の初期費用完全ガイドも参考にしてください。

修繕費の積立計画


実際に発生した修繕費:3年間の記録

「理論はわかった。実際にはどれくらいかかっているの?」

包み隠さず公開します。3年間で発生した主な修繕費の記録です。

都内1戸目(築12年RC、2022年購入)

時期修繕内容費用
2022年8月(購入8ヶ月目)洗濯機排水口の詰まり修繕82,000円
2023年3月(退去時)クロス張り替え・クリーニング98,000円
2023年4月(次入居前)玄関鍵交換18,000円
2024年2月水栓パッキン交換23,000円
3年間合計221,000円

年間平均:約73,700円。家賃85,000円×12ヶ月に対して7.2%。

都内2戸目(築18年RC、2023年購入)

時期修繕内容費用
2023年11月(購入直後)洗面台水栓交換42,000円
2024年6月エアコン補修(ガス補充)28,000円
2025年1月(退去時)クロス・フローリング補修132,000円
約2年間合計202,000円

年間平均:約101,000円。家賃72,000円×12ヶ月に対して11.7%。

埼玉1戸(築22年RC、2024年購入)

時期修繕内容費用
2024年4月(購入直後)洗面台排水口ゴム交換8,000円
2024年9月給湯器リモコン交換38,000円
約1年間合計46,000円

(まだ1年未満の保有なので参考程度)

3年間の総括

3年間の修繕費合計:約469,000円(3戸合計)。年間平均換算で約156,000円。

3戸合計の月家賃222,000円×12ヶ月=2,664,000円に対して、修繕費率は約5.9%でした。

ただし、今のところ給湯器・エアコン等の大型設備交換は発生していません。今後これらが重なる時期が来ると、年間の修繕費は一気に上がります。今は積立を続け、そのタイミングに備えています。

不動産所得の確定申告では修繕費も経費として計上できます。詳しくはサラリーマン大家の税金完全ガイドで解説しています。


修繕積立金(マンション管理費)と自前積立の違い

ここは混乱しやすいポイントなので、整理しておきます。

マンション管理費・修繕積立金とは

区分マンションでは、毎月「管理費」と「修繕積立金」をマンション管理組合に支払います。

  • 管理費: 共用部の清掃・管理業務費用(返ってこない)
  • 修繕積立金: 建物全体の大規模修繕(外壁、屋根、エレベーター等)のための積立(将来の修繕に使われる)

これらは「共用部分」の維持・修繕に使われるものであり、専有部内(自分の部屋)の修繕には使えません。

オーナーが自前で積み立てるべきもの

冒頭に挙げた表の通り、エアコン・給湯器・クロス・フローリング等の専有部分の修繕は、オーナーの自己負担です。

マンション管理費・修繕積立金として毎月支払っていても、それで「修繕費は全部カバーされている」と安心してはいけません——これが僕が最初に誤解していた部分でした。

管理会社との関係と修繕費の判断基準については、不動産管理会社の選び方と上手な使い方で詳しく解説しています。


修繕費を抑えるための予防的なメンテナンス

積み立てを増やすだけでなく、「修繕費自体をなるべく少なくする」視点も大切です。

入居者対応の初動を速くする

小さなトラブルを放置すると、大きな修繕につながることがあります。

排水の流れが悪い→放置→詰まり→配管修繕という流れを防ぐには、入居者から連絡が来たらすぐに対応することが重要です。

管理会社と「入居者からの連絡をオーナーにも共有する」設定にしておくと、対応漏れが減ります。

定期的な設備点検を依頼する

給湯器やエアコンは、壊れる前の定期点検で寿命を延ばせることがあります。

管理会社に「入居者が退去した際の室内チェック項目」を細かく設定しておくと、小さな問題を早期発見できます。

退去時の原状回復を正確に区分する

退去時の修繕費は、「入居者負担分」と「オーナー負担分」に分かれます。

国土交通省のガイドラインでは、自然損耗・経年劣化はオーナー負担、故意・過失による損傷は入居者負担とされています。

この区分を曖昧にしたまま全額オーナー負担にしていると、修繕費が増えます。管理会社に原状回復の査定を丁寧にしてもらえるかどうかは、会社選びの重要な基準の一つです。

空室リスクを下げて修繕機会を減らすための対策は、空室リスクを下げる5つの具体策にまとめています。

物件の内装メンテナンス


まとめ:修繕費積立は「投資の生命線」

3年間、修繕費と向き合ってきてわかったことを最後に整理します。

修繕費積立の基本ルール

  • 目安は年間家賃の8〜15%(築年数が古いほど高め)
  • 大型設備の交換サイクルから逆算して計算すると精度が上がる
  • 専有部修繕費は自前積立が必須(マンション管理費・修繕積立金では賄えない)
  • 別口座に積み立てて、日常の生活費と混在させない
  • 計算額の20〜30%増しを実際の積立額にする

修繕費積立は、「見えないコスト」を「見えるコスト」に変える作業です。

積み立てていない状態で大きな修繕が必要になると、資金が底をつき、最悪の場合は物件を手放すことになります。これが、不動産投資の失敗パターンの一つです。

逆に、しっかり積み立てていれば、修繕が発生しても慌てることなく、冷静に対処できます。それが「不動産経営を長く続ける」ための基礎力になるのだと——3年経った今、実感しています。

焦る必要はありません。まず自分の物件の主要設備をリストアップして、交換サイクルと費用を書き出してみてください。それが修繕費積立の第一歩です。

物件購入後の収支シミュレーションと長期計画については、初めての不動産投資購入シミュレーション完全版も合わせてご覧ください。


皆さんはどのように修繕費の積み立てを管理されていますか?


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