普通借家で痛い目を見た話|2戸目から定期借家に切り替えた理由と後悔

普通借家でトラブルに巻き込まれたサラリーマン大家が定期借家に切り替えた経緯を本音で解説。退去交渉の壁、定期借家のメリット・デメリット、向いている物件の見極め方まで包み隠さず書きます。

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不動産投資を始めて2年ほどが経った2024年7月のことを、今でも思い出します。

管理会社からメールが届いたのは、平日の昼前でした。タイトルは「墨田区のワンルームについてご報告」。開いた瞬間、嫌な予感がしたのをよく覚えています。内容は家賃の遅延通知でした。6月分と7月分、合計で13万6,000円(月額6万8,000円)が未入金だという。

サラリーマン大家として2戸目を買おうかと考えていた矢先のことでした。「最初の物件はうまくいっている」と思い込んでいただけに、正直かなり動揺しました。

問題はその後でした。管理会社と連絡を取りながら対応を進めていくうち、「もうこの方に退去してもらいたい」と思うようになった。収入が不安定になっているのが明らかで、このまま住み続けてもらうのはリスクが高いと判断したのです。でも、その気持ちを行動に移すことがいかに難しいか、当時の僕はまだ知りませんでした。

賃貸物件のイメージ

「退去してほしい」が言えなかった——2024年7月の話

入居者は40代の男性。入居してから1年半ほどで、転職を機に収入が不安定になったようでした。管理会社を経由して連絡は取れていましたが、「次の給与が入れば必ず払う」という言葉が繰り返されるだけで、状況は一向に改善しませんでした。

僕の内心は、正直に言うと「早く出ていってほしい」の一言でした。でも、それを直接言うことも、管理会社に強く求めることも、法律上はできない。管理会社の担当者も「督促はしていますが、強制退去には至っていません」という返答を繰り返すばかりで、ひたすら進展がない状況が続きました。

家賃保証会社が立て替えてくれるおかげで、僕の実損は一時的にはゼロです。でも、それが逆に「訴訟を起こす理由がない」という状況を生み出していて、解決が遠のいていた。こういう構造的な問題があるとは、投資を始める前には想像もしていませんでした。

入居者審査の段階で見抜ける可能性もあったかもしれません。入居者審査で見落としがちなサインに書いているようなポイントを、当時の僕はきちんと押さえられていなかったと思っています。

また、家賃滞納が実際に起きてしまった後の具体的な対応フローについては家賃滞納が続いた場合の対応手順にまとめています。催告書の送り方や弁護士介入のタイミングなど、参考になる部分があると思います。

なぜ大家は「普通借家」で弱いのか

普通借家契約は、借地借家法によって入居者の権利が強く守られています。大家が「出ていってほしい」と思っても、契約を一方的に終了させることは原則としてできません。

更新を拒絶したり、解除を求めたりするには「正当事由」が必要です。正当事由として認められるのは、主に以下の場合に限られます。

  • 入居者による建物の重大な毀損
  • 長期にわたる家賃滞納(おおむね3ヶ月以上の継続)
  • 大家自身が自己使用するための緊急の必要性

今回の2ヶ月の滞納というのは、この「おおむね3ヶ月以上」という基準に達していない、微妙なラインでした。しかも先述の通り、家賃保証会社が立て替えてくれているため「大家の実損がない」という状態が続いていた。実損がないということは、訴訟を提起する法的な根拠としても弱くなる。

(ここ書くのに30分悩んだ。大家としての本音と法律の建前が複雑に絡み合う話なので。結論として僕が言いたいのは、「普通借家は入居者保護が前提に設計されており、大家が不満を感じても合法的に退去させることは非常に難しい」ということです。)

家賃保証会社の選び方や仕組みについては家賃保証会社の選び方も参考にしてください。保証の範囲や利用条件によって、いざという時の対応が変わってきます。

弁護士に相談して初めて知った「定期借家」という選択肢

結局、入居者が自主退去したのはトラブル発生から74日後のことでした。催告書の送付と弁護士の介入を経て、立退料の支払いなしに解決できたのは不幸中の幸いでした。ただ、74日という時間的・精神的なコストは、数字では表しにくいものがありました。

退去が完了した後、弁護士の先生から「次に物件を取得するなら、定期借家契約を検討してみてはどうですか」というアドバイスをいただきました。そこで初めて、定期借家という選択肢を真剣に調べることになりました。

普通借家と定期借家の違いをシンプルにまとめると、以下の通りです。

普通借家定期借家
契約期間2年ごとに更新(合意があれば継続)決めた期間で終了(再契約は別途)
更新拒絶「正当事由」が必要不要(期間満了で終了)
入居者の中途解約原則1ヶ月前予告200㎡未満居住用は特例あり
大家側の強さ弱い強い(期間内は双方継続)

最も大きな違いは「更新」の概念です。定期借家には更新がなく、定めた期間が来れば契約は終了します。退去を求めるために「正当事由」は必要ありません。2024年7月に僕が直面した問題は、定期借家であれば構造的に起きにくいものでした。

不動産契約のイメージ

2戸目で定期借家を試した——3つの変化と1つの誤算

2024年10月に埼玉の物件を1,380万円で購入しました。2年定期借家として設定し、初めての「定期借家オーナー」になりました。

「“定期借家は入居者が決まりにくい”って聞いたけど?」と思った方——正直に言います。2ヶ月と11日かかりました。管理会社の話では、同条件の普通借家なら1ヶ月から1.5ヶ月程度が相場だということでした。その差の空室期間、持ち出しは13万円ほどになりました。

それでも定期借家を選んでよかったと思っている理由が、主に3つあります。

変化1: 「次の展開」が見えるようになった

定期借家にすることで、契約終了日が最初から明確になります。今の物件は2026年11月が契約満了日です。「この物件をどうするか」という出口の見通しが立てやすくなりました。普通借家では、更新のたびに「あと何年住み続けるんだろう」という不確実性を抱え続けることになります。

変化2: 入居者の属性が変わった

定期借家という条件があることで、「最初から長期定住を前提としない入居者」が集まりやすくなります。今の入居者は30代の単身者で、「2年後に実家に帰る予定がある」という方です。定期借家の条件に合う目的を持った入居者が来てくれる、という副次的な効果がありました。

変化3: 精神的な余裕が生まれた

「最悪の場合でも、期間満了で終われる」という安心感は、想像以上に大きいものでした。管理会社からのメール通知を見るたびに緊張していた2024年の自分と比べると、今は格段に落ち着いています。

誤算: 家賃を5.8%下げないと入居者が来なかった

これは包み隠さず書きます。当初、家賃を6万8,000円で設定していましたが、定期借家という条件を嫌がる問い合わせが続き、最終的に6万4,000円まで下げました。2年間で9万6,000円の差になります。

ただ、2ヶ月と11日の空室損失と合わせても、精神的な安心感は数字では測れないと思っています。空室リスク自体への備えについては空室リスクへの対策も参考にしてください。

定期借家が向く物件・向かない物件

定期借家が全ての物件に適しているわけではありません。経験と管理会社への確認をもとに、向く物件・向かない物件を整理してみます。

定期借家が向く物件

  • 都心・ターミナル駅周辺: 入居需要が厚く、条件が多少厳しくても入居者が見つかりやすい
  • 単身者向けワンルーム: 転勤族や学生はもともと2〜3年で退去するケースが多く、定期借家との相性がいい
  • 将来売却を検討している場合: 契約終了のタイミングを自分でコントロールできるため、出口戦略の自由度が上がる

定期借家が向かない物件

  • 地方・郊外の入居需要が弱いエリア: もともと入居者が集まりにくいところに定期借家という条件が加わると、空室が長期化するリスクが高い
  • ファミリー向け物件: 長期居住を前提としている層には定期借家は敬遠されやすい
  • 安定収入を最優先する場合: この場合はサブリースの方が合う場合もあります。ただしサブリースには別のリスクもあります

サブリースの仕組みとリスクについてはサブリース契約の落とし穴で詳しく解説しています。また、どの契約形態が自分に合っているかを考える上では、サラリーマン大家のロードマップで全体像を把握するのが役立ちます。

「自分の物件はどちらが向いているか」は管理会社に相談するのが一番です。「このエリアで定期借家にした場合、空室期間はどのくらい延びますか」という具体的な質問をぶつけてみてください。答え方によって、その管理会社の実力も見えてきます。管理会社選びについては管理会社の選び方も参考にしてください。

不動産長期投資

よくある質問

Q: 定期借家は入居者に嫌われると聞いたけど本当?

A: 入居者によります。単身者・転勤族・一時的な居住を求める層には受け入れられやすい。逆にファミリー層や長期居住を希望する層には敬遠されます。エリアと物件タイプによって影響の度合いが大きく変わるため、管理会社に「このエリアでの定期借家の実績」を必ず確認してください。

Q: 普通借家から定期借家に途中で変更できますか?

A: 現在の入居者との契約が普通借家の場合、契約途中で強制的に定期借家へ変更することはできません。退去後に新たに定期借家として募集する形になります。2026年5月時点では借地借家法上の普通借家保護は変わっていません。

Q: 定期借家は2年しか設定できませんか?

A: いいえ。契約期間は自由に設定可能です。1年・3年・5年など任意の期間で設定できます。ただし「1年未満」の契約は法的に「期間の定めのない契約」とみなされるリスクがあるため注意が必要です。

Q: 定期借家にすると確定申告の方法は変わりますか?

A: 所得税の確定申告の方法は基本的に変わりません。家賃収入・必要経費の計算方法は普通借家と同じです。むしろ契約終了日が明確になるため、修繕・保険更新のタイミングを計画しやすくなる副次的なメリットがあります。

Q: 正直、定期借家にして後悔しましたか?

A: 後悔していません。ただし「良かった」と言い切れるかは、まだ1年余りしか経っていないので検証中です。家賃収入が月4,000円減った代わりに精神的ストレスが大幅に減りました。2026年11月の契約満了時が本当の意味での「答え合わせ」になります。

【2026年5月追記】この記事公開後、「自分も同じ経験をした」というメッセージを複数いただきました。普通借家での退去交渉に苦労した大家は意外と多いようです。一方で「定期借家にしたら空室が4〜6ヶ月続いた」という声も地方物件で散見されます。定期借家を選ぶ前に、エリアの賃貸需要と空室リスクを十分に確認してください。

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