原状回復の費用、大家が負担すべきものとは?退去トラブルを防ぐQ&A7選【2026年版】

退去時の原状回復費用で大家が負担すべき範囲をQ&A形式で解説。経年劣化と故意過失の判断基準、敷金の使い方、退去立会いのコツ、トラブル防止策まで、サラリーマン大家が実体験で語ります。

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よくある疑問を7問に整理しました

「原状回復って、どこまで入居者負担でどこまで大家負担なんですか?」

これ、本当によく聞かれます。コメントやDMで届く質問の中でも、断トツで多い。

正直に言うと、僕自身が2023年3月に初めての退去立会いをしたとき、この問題で完全に失敗しました。

入居者は20代の男性で、3年間住んでいた方でした。退去立会いに行ったら、壁紙に明らかな黄ばみがある。「タバコは室内では吸っていません」と言い張るんですが、どう見てもヤニっぽい変色で、管理会社の担当者も「確かに入居者負担になりますが…」と歯切れが悪い。その場の雰囲気に飲まれて、結局曖昧なまま立会いを終えてしまいました。

あとで調べたら、タバコのヤニによる壁紙の変色・臭いは「故意・過失による損耗」として入居者負担になる典型例でした。でも立会い時にその場でハッキリ言えなかった——正直、費用の3分の1くらいしか回収できなかったと思います。

その反省があって、この記事を書いています。同じ後悔をしてほしくないので。

退去立会いのイメージ

よく聞かれる疑問を7つに整理して、順番に答えていきます。


Q1: そもそも原状回復って、入居者の全額負担じゃないの?

A: 違います。 ここ、一番多い誤解です。

国土交通省の「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によれば、原状回復の基本的な考え方はこう定義されています。

「原状回復とは、賃借人が借りた当時の状態に戻すことではなく、賃借人の故意・過失による損耗・毀損を復元すること」

つまり、経年劣化や通常使用による損耗は、大家負担が原則です。入居者がどれだけ大切に使っても避けられない自然な劣化は、オーナーが費用を持つべきとされています。

「え、そんなの聞いてないよ」という大家さん、意外と多いんですよね。僕もそうでした。「退去費用は全部入居者に請求できる」と思い込んでいた時期がある。

GW前に初めての退去を経験した方から「全額請求しようとして揉めた」というDMをよくもらいますが、このガイドラインを知らないことが原因のケースがほとんどです。


Q2: 大家が負担しなければいけないものは、具体的に何?

A: 経年劣化・通常使用の範囲内の損耗が大家負担です。 典型例を整理します。

大家負担が原則のもの:

  • 壁クロスの日焼け・変色(通常の日光による)
  • 畳の日焼け、フローリングの軽い色落ち(通常使用の範囲内)
  • 壁の小さな画鋲穴(日常的な使用による数個程度)
  • 設備機器の自然故障(経年劣化によるもの)
  • 次入居者のための鍵の交換(オーナー負担が原則)

入居者負担になるもの:

  • タバコのヤニによる壁クロスの変色・臭い
  • ペットによる床・壁・建具の損傷
  • 結露を放置して発生したカビ(換気を怠った過失)
  • 重い家具を引きずってできた床の深い傷
  • 故意・過失による設備の破損・損壊

「通常使用の範囲内かどうか」が判断の軸になります。ただし、これが実際には難しくて——(ここ書くのに20分くらい悩んだ)——ケースによって解釈が変わります。

空室リスクを最小化する7つの対策でも触れていますが、入居者とのトラブルは退去時に集中します。入居者の選び方と退去時の対応、両方が重要なんです。

壁クロスの状態確認イメージ


Q3: 経年劣化と故意・過失の境界線はどこ?

A: 明確な線引きはなく、状況によって判断が変わります。 ただ、いくつかの目安があります。

壁クロスの場合

状態負担区分
日光・通常使用による薄い変色大家負担
タバコのヤニ(明確な黄ばみ・臭い)入居者負担
落書き・汚損入居者負担
画鋲穴程度(数個)大家負担
大きな穴(壁を壊したもの)入居者負担

床フローリングの場合

状態負担区分
軽微な傷(通常生活範囲内)大家負担
重い家具を引きずった大きな傷入居者負担
結露を放置してできた腐食入居者負担
日光による変色・経年劣化大家負担

費用按分の考え方

壁クロスの耐用年数は6年とされており、国交省のガイドラインでは経過年数に応じて入居者負担分を減額するという考え方が示されています。

たとえば、6年入居後に退去した場合、クロスの価値はほぼゼロに近くなります。この場合、入居者が汚損させたとしても、費用請求の全額は難しくなる(クロスを新品に替えても「価値の回復」と認められにくいため)。

“「6年で価値ゼロ? じゃあ6年以上住んだ人からは何も取れないの?」って思いますよね。次で答えます。“


Q4: 退去費用、敷金でカバーできない分はどうなる?

A: 請求権は残りますが、回収は難しくなります。

敷金がある場合は、費用を相殺して不足分を追加請求します。敷金内で収まることも多いですが、長期入居者の場合は敷金が費用を上回ることもある。

では、長期入居者(6年以上)の場合はどうか。壁クロスなど耐用年数が経過した設備は費用請求が難しくなりますが、完全にゼロにはなりません。

  • 特約で合意したクリーニング費用は請求できる場合がある
  • 著しい損耗の下地修繕費は別途請求できることも
  • 敷金がない・不足する場合は内容証明郵便での請求 → 小額訴訟という流れ

ちょっと話が逸れるけど、最初の契約書の作り込みって本当に大事なんですよね。信頼できる管理会社の選び方と見極め方でも触れていますが、契約書周りをちゃんと整備してくれる管理会社かどうかで、退去時のトラブル頻度が全然違います。

「退去時クリーニング費用は借主負担(〇〇円)」という特約を入居時の契約書に明記しておくことが、最もシンプルで効果的な対策です。


Q5: 退去立会いの時に気をつけることは?

A: 立会いは損耗を確認して合意を取る最重要の場面です。曖昧にすると後悔します。

必ずやること

1. 写真・動画を撮る(日時情報付き)

入居時にも撮るべきですし、退去時も全部屋・全箇所を記録します。特に傷や汚れがある箇所は、位置と大きさがわかるように撮影。スマホの動画で全部屋を歩きながら録画するのも有効です。

2. 損耗箇所リストを作って入居者に確認・署名をもらう

口頭での「わかりました」ではなく、書面で。「退去確認書」の形でその場でサインをもらいます。後から「そんなこと言ってない」というトラブルを防ぐためです。

3. 当日に金額まで合意させなくてよい

立会い当日に費用を確定させる必要はありません。後日見積もりを送って、内容に合意してもらってから精算する流れで十分。焦って曖昧な合意をするより、後日書面でやり取りする方が安全です。

やってはいけないこと

  • 入居者の雰囲気に流されて損耗箇所を見逃す(“まあいいか”は禁物)
  • 感情的な言い合いになる(管理会社に立ち会ってもらうのが無難)
  • その場で過剰な費用を主張する(かえってトラブルになる)

入居者審査で失敗した話——見落としていた3つのサインでも書きましたが、退去トラブルは実は入居審査と密接にリンクしています。問題を起こしやすい入居者は、退去時にも揉めやすい。入口と出口は一体です。

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退去確認書類のイメージ


Q6: 入居者が原状回復費を払わない場合はどうする?

A: 正直に言うと——取りにくいケースが多いです。

まず敷金で相殺する

敷金がある場合は、費用を相殺して不足分を請求します。敷金内で収まるケースも多いです。

敷金がない・不足分が出る場合の手順:

  1. 内容証明郵便で請求書を送る(証拠として残るため)
  2. 小額訴訟(60万円以下の金銭請求に使える簡易な手続き)
  3. 支払督促(申し立て費用が少なく、手続きが簡便)

実際のところ、「少額の費用のために裁判費用と時間をかけるのは割に合わない」と判断して、泣き寝入りを選ぶ大家さんも多いです。

ここだけの話——僕も1件そういうケースがありました。退去後に家賃滞納が発覚して(入居審査を甘くしたのが原因でした)、追加費用を請求しようとしたら連絡がつかなくなった。小額訴訟の準備を始めたところで、管理会社から「費用対効果的に難しい」と言われて断念した経験があります。

入居者の質で回収リスクは大きく変わります。審査を手抜きすると、最終的に退去費用で損する。不動産投資で失敗しやすいパターンにも「入居者審査の甘さ」が繰り返し登場するのはそういう理由です。


Q7: 原状回復トラブルを最初から防ぐ方法はある?

A: あります。事前の仕組み作りが9割です。

1. 入居時の写真記録を徹底する

「入居時チェックリスト」を作って、既存の損耗を写真付きで記録し、入居者にも確認・署名してもらう。退去時に「最初からこの傷はあった」と言われるのを防ぎます。これをやるかどうかで、立会い時の説得力がまったく違う。

2. 契約書に特約を盛り込む

「退去時クリーニング費用は借主負担(○○円)」などを特約として明記しておく。ただし、特約は消費者契約法などの観点から「合理的な範囲」でないと無効になる場合があるので、管理会社や弁護士と相談して作成を。

3. 退去対応を管理会社に任せる

退去立会い・精算・請求——すべて自分でやるのは大変で、感情的になりやすい。信頼できる管理会社の選び方と見極め方を参考に、退去対応の実績がある会社を選ぶのが最善策です。管理会社変更の実体験レポートでも書いていますが、管理会社によって退去対応のクオリティは雲泥の差があります。

4. 家賃保証会社を活用する

サブリース契約の落とし穴と活用法でも触れていますが、家賃保証会社は「家賃滞納時の立て替え」だけでなく、退去時の費用保証サービスを提供しているところもあります。費用対効果を確認してみてください。


まとめ:原状回復の基本3原則

ここまで読んでくれた人に、シンプルにまとめます。

原則1:経年劣化は大家負担、故意・過失は入居者負担

原則2:入居時の写真記録が最強の証拠

原則3:退去時の合意は書面で取る

この3つを守るだけで、トラブルの7割くらいは防げると思っています。2万3,000円〜5万8,000円くらいの小額なやり取りで生じる摩擦は残るとしても、「ガツンと大きく損をする」ケースはかなり減らせます。

「ここまで読んでくれた人に正直に言うと」——原状回復の問題って、物件を買う前は考えてなかった。でも実際に大家をやってみると、退去のたびに「あれ確認しておけばよかった」「この書類があれば言えたのに」が出てくる。経験を積むほど対応は上手くなりますが、最初から仕組みを作っておくのが一番の近道です。

退去・管理のプロに相談してみよう

原状回復トラブルを防ぐには、仕組みを整えることが大切。経験豊富な不動産管理のプロへの無料相談を活用して、入居〜退去まで安心できる体制を作りましょう。

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よくある質問

Q: 6年以上住んだ入居者から原状回復費は取れないの?

A: 壁クロスなど耐用年数が経過した設備については費用請求が難しくなりますが、特約で合意したクリーニング費用は請求できる場合があります。また著しい損耗がある場合は下地修繕費として請求できるケースも。国交省のガイドラインを参照しつつ、管理会社と相談して判断することをおすすめします。「経過年数が長い=全額免除」ではなく、「損耗の程度と原因」で判断されます。

Q: 退去立会いに大家が立ち会う必要がある?

A: 義務ではありません。管理会社に任せることも可能です。ただし大きな損耗が予想される場合や、初めて退去対応をする場合は同席することをおすすめします。立会いの場で「その場の雰囲気に流されて合意してしまう」のが最大のリスクなので、慣れないうちは管理会社に交渉を主導させた方が結果的に適切な費用回収ができることも多いです。

Q: 敷金ゼロの物件で退去費用の請求はどうなる?

A: 敷金がなくても、原状回復費用の請求権は残ります。ただし回収が困難になるリスクが高まるのも事実です。入居者審査を厳格にする、家賃保証会社を活用するなどの対策で、回収不能リスクを下げることが重要です。不動産投資の初期費用完全ガイドでも敷金設定の考え方について触れています。

Q: 退去後に発覚した損耗(カビ・シロアリ等)は入居者に請求できる?

A: 状況によります。入居者が換気を怠ったことによる結露カビは入居者負担が認められやすいですが、建物の構造上の問題から発生したカビは大家負担になる可能性があります。「発覚が退去後」でも、入居中の行為によるものであれば請求可能なケースはあります。ただし証明が難しいため、入居時・退去時の写真記録が決定的な証拠になります。

Q: 原状回復のガイドラインには法的拘束力がある?

A: 国交省のガイドラインは直接の法的拘束力を持つ法律ではありませんが、裁判の判断基準として広く参照されており、事実上の標準として機能しています。賃貸借契約書の特約がガイドラインと大きく乖離する場合、特約の有効性が争点になることがあります。「ガイドラインを知らなかった」は理由になりません——大家として最低限把握しておくべき内容です。


追記(2026/04/15):2025年後半から、ペット可物件における原状回復のトラブルが増加しているという報告が管理会社各社から上がっています。特に「ペット不可の物件でこっそり飼育していた」というケースで、入居者が認めず修繕費が宙に浮くパターンが続いているようです。ペット可・不可を問わず、入居時の室内写真・動画の記録は2026年現在でも最強のリスクヘッジです。僕自身も最近、管理会社から「入居時の記録をもっと細かくしてほしい」とアドバイスをもらいました。


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