不動産投資で相続税が下がるって本当?Q&Aで経理マン大家が数字で検証【2026年版】

不動産投資の相続税対策効果を経理マン大家が数字で検証。評価額圧縮の仕組み・節税シミュレーション・タワマン節税の現状・落とし穴まで、6つのQ&Aで包み隠さず解説します。

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不動産投資を続けていると、ある日こんな話が出てきます。

「不動産に変えておけば、相続税が安くなるよ」

僕がこの話を真剣に聞いたのは、3月の確定申告の打ち合わせで税理士に「将来、親御さんの相続も視野に入れてますか?」と言われたときでした。正直、その瞬間まであまり意識していなかった。

でも経理の仕事柄、「なんとなくわかった気になる」は最も危険だと知っています。

そこで、税理士への追加相談と自分での調査を経て、「不動産投資と相続税対策の関係」を整理しました。この記事では、その内容を6つのQ&A形式でまとめます。

包み隠さず書きますが、「相続税対策は万能ではない」「落とし穴もある」——そのあたりも正直に書きます。

相続と不動産投資のイメージ


Q1: 不動産投資はなぜ相続税対策になるの?仕組みを教えてほしい

A: 「相続税評価額」が実際の時価より低く評価されるからです。

相続税は「相続した財産の評価額」に対してかかります。現金2,000万円を相続した場合、その2,000万円がそのまま評価額になります。

ところが、不動産(特に賃貸用マンション)は少し違います。

評価額が下がる2つの理由

理由1: 路線価による評価

土地は「時価」ではなく「路線価」で評価されます。路線価は一般的に時価の70〜80%程度に設定されています。 つまり、時価1,000万円の土地でも、相続税評価額は700〜800万円程度になる計算です。

理由2: 「貸家建付地」「貸家」の評価減

賃貸に出している場合、さらに評価が下がります。

  • 土地(貸家建付地): 路線価評価額 × (1 - 借地権割合60% × 借家権割合30%) ≒ 約18%減
  • 建物(貸家): 固定資産税評価額 × (1 - 借家権割合30%) = 30%減

包み隠さず書くと、都内のワンルームマンション(区分所有・時価1,500万円)の相続税評価額は、条件によっては1,000万円を切ることもあります。

現金1,500万円を相続する場合と比べると、評価額が30〜44%程度圧縮されるイメージです(物件や立地によって大きく変わります)。

不動産投資の税金全般については、不動産投資の税金ガイドでまとめています。


Q2: 具体的に相続税はどのくらい下がる?数字で知りたい

A: 評価額の圧縮率と相続税率次第なので一概には言えません。ただ目安として、評価額の30〜44%圧縮が期待できるケースがあります。

税理士と一緒に試算してみたので、簡単なシミュレーションを載せます。

試算の前提

項目内容
相続財産の組み換え現金1,500万円 → 都内ワンルームマンション(賃貸中)
土地の路線価評価率時価の約75%
建物の固定資産税評価率取得価格の約60%
借地権割合60%(都内標準)

評価額の変化(土地部分)

  • 時価配分(土地70%):1,500万円 × 70% = 1,050万円
  • 路線価評価:1,050万円 × 75% = 787万円
  • 貸家建付地評価減:787万円 × (1 - 0.6 × 0.3) = 645万円(約38%減)

評価額の変化(建物部分)

  • 時価配分(建物30%):1,500万円 × 30% = 450万円
  • 固定資産税評価額:450万円 × 60% = 270万円
  • 貸家評価減:270万円 × (1 - 0.3) = 189万円(58%減)

合計評価額の変化

  • 現金のまま:1,500万円
  • 不動産に変えた後:645万円 + 189万円 = 834万円

差額: 666万円の評価圧縮(約44%減)

この666万円分に対する相続税が節税できる計算になります。相続税率が15%のゾーンなら約100万円の節税、20%なら約133万円の節税になります。

ただし、これはあくまで「評価額の比較」です。実際にどれだけ節税になるかは、相続財産全体の規模と相続税率によって変わります。

不動産の節税・減価償却については、節税・減価償却ガイドも合わせてご覧ください。


Q3: ワンルームマンション(区分所有)でも相続税対策になる?

A: はい、なります。ただし「期待値ほど大きくない」ことは正直に書きます。

区分所有マンションの場合、土地の持分が小さいため、土地の評価圧縮効果が限られます。

1棟アパートと比較すると:

1棟アパート区分所有(ワンルーム)
土地持分大きい(100%)小さい(敷地全体の〇分の1)
評価圧縮の恩恵大きい相対的に小さい
初期投資額大きい(数千万〜数億円)少ない(1,000〜2,000万円台から)
流動性低い比較的高い
管理の手間大きい管理会社委託で楽

僕が保有しているのはすべて区分所有(ワンルーム)です。1棟に比べると評価圧縮の絶対額は少ないですが、「初期投資が少なくても効果がある」「流動性が高い」「本業と両立しやすい」という点でサラリーマン大家には向いていると思っています。

ちょっと話が逸れますが、「1棟アパートで大きく節税を」と考えて過大な借入をした大家仲間が、空室リスクで苦しんでいる——そういう話も聞きます。節税効果だけを目的にした投資判断の危うさは、後のQ5で書きます。

サラリーマン大家の全体的な投資方針については、サラリーマン大家のロードマップをご覧ください。


Q4: タワマン節税はもう使えないって聞いたけど本当?

A: 2024年の税制改正でかなり規制が入りました。「旧来の手法」は使いにくくなっています。

タワマン節税とは、超高層マンションの高層階を購入し、時価と相続税評価額の大きな乖離を利用した節税手法でした。

例えば、時価5億円の高層階でも相続税評価額が1.5億円を下回るようなケースが、かつては存在していました。

2024年改正の主な内容

国税庁は「相続税・贈与税におけるマンションの評価方法の見直し」を実施し、マンションの相続税評価額が時価の60%未満になる場合には自動的に補正される仕組みが2024年1月1日以降の相続から適用されています。

これにより、「時価5億円 → 評価額1億円」のような極端な乖離は難しくなりました。

ただし、誤解してほしくないのですが——「一般的なワンルームマンションの評価圧縮」は今も有効です

タワマン節税が規制されたのは「時価と評価額の乖離が大きすぎるケース」です。普通の投資用区分マンションを賃貸に出している場合の評価圧縮(Q1〜Q2で解説した内容)は、2026年時点でも適法な節税方法です。

不動産投資の確定申告については、サラリーマン大家の確定申告2026年版でまとめています。


Q5: 相続税対策のための不動産投資——注意すべきリスクは?

A: 「節税のために不動産を買う」は危険なケースがあります。包み隠さず書きます。

相続税対策として不動産投資を検討する際、最も気をつけるべきリスクをまとめます。

リスク1: 収益性を無視した物件選びになりがち

「評価圧縮率が高い物件を買いたい」と思うと、利回りの低い物件・空室リスクの高いエリアを掴んでしまうことがあります。

節税目的で1,500万円で買った物件が、入居者がつかずキャッシュフローがマイナスになる——節税効果は期待できても毎月赤字が続く、という本末転倒な事態が起こり得ます。

しかも、空室の場合は「貸家」「貸家建付地」の評価減が適用されないため、節税効果も消えます(Q1の仕組みを思い出してください)。

リスク2: ローンが残っている場合の誤解

ローン付きの物件を相続した場合、不動産評価額からローン残高は控除されます(プラス財産 - 借入金)。

つまり、ローン残高が大きいほど課税財産が減るように見えますが、実態は「借金も一緒に相続している」ということです。キャッシュフローの出ない物件にローン残高が残っている状況は、むしろ相続人の負担になります。

リスク3: 相続時に換金できないリスク

「相続税を現金で払えない」「でも物件を換金しなければならない」という事態になった場合、不動産は短期間では売りにくい資産です。

特に、相続人が「不動産の管理に興味がない」場合、売却まで管理を誰がするかという問題も発生します。

結論

相続税対策として不動産投資をするなら、「まず投資として成り立つかどうか」を先に判断すること——これが僕のスタンスです。

収益性と評価圧縮の両方が成り立つ物件を選ぶことが、本当の意味での「不動産投資を活用した相続対策」だと思っています。

不動産投資の失敗パターンについては、不動産投資の失敗パターン15選も参考にしてください。


Q6: 親から不動産を相続する場合、何に注意すればいい?

A: 相続した瞬間から「オーナー」になります。管理・ローン・賃貸借契約の確認を最初にすべきです。

自分が不動産を「買う」ケースだけでなく、「親から受け継ぐ」ケースも考えておきたいところです。

確認すべき5つのポイント

1. ローンの有無と残高 ローンが残っている場合、相続と同時に返済義務が承継されます。まずローン残高と月々の返済額を確認。団信(団体信用生命保険)が適用されてローンが免除されるケースもあるので、金融機関への確認が先決です。

2. 管理会社との契約内容 現在の管理会社・管理委託料・契約期限を確認します。管理会社を変えるかどうかは、相続後に改めて判断できます。

3. 賃貸借契約の内容 入居者との契約(普通借家契約 or 定期借家契約)と家賃の確認。オーナーが変わっても基本的に既存の契約は引き継がれます。

4. 相続税の申告期限 相続税の申告・納付期限は相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内です。この期限を過ぎると延滞税・加算税が発生します。

5. 固定資産税の名義変更 不動産を相続したら、速やかに所有権移転登記と固定資産税の納税者変更手続きを行います。

不動産相続の手続き

親から物件を受け継ぐということは、その物件に込められた歴史も引き継ぐことでもあります——感慨深いものがあります。と同時に、冷静に数字も確認しなければなりません。


よくある質問

Q: 現金2,000万円を不動産に変えるだけで相続税が下がる?

A: 原則はいですが、「変えるだけで自動的に大きな節税」とはなりません。物件の立地・賃貸状況・土地持分などによって圧縮率は変わります。空室が続いていると評価減の適用がなくなるため、賃貸中の状態を維持することが重要です。

Q: 相続税対策と不動産投資の利益は両立できる?

A: 可能です。むしろ「収益性のある物件」の方が評価圧縮効果も高い(賃貸中が条件のため)です。利回りをしっかり確保しながら、評価圧縮効果も享受できるのが理想形ですが、節税優先で収益性の低い物件を買うと本末転倒になります。

Q: 不動産投資で法人化すると相続対策の効果はどう変わる?

A: 法人名義の不動産は、法人株式として評価されるため、相続税評価の仕組みが変わります。一般的に、法人化は相続対策としてより高度な手法になりますが、設立・維持コストも増えます。詳しくは法人化のタイミング解説記事を参照してください。

Q: 不動産を相続した後に売却するとどんな税金がかかる?

A: 相続した不動産を売却すると「譲渡所得税」がかかります。税率は所有期間によって異なり、5年超で長期譲渡所得(20.315%)、5年以下で短期譲渡所得(39.63%)です。相続した場合は被相続人の取得日・取得費を引き継ぐため、長期所有として扱われるケースも多いです。


追記(2026/04/17)

この記事を書いた後、「親の資産が不動産メインで、相続後の管理が心配」というご相談を複数いただきました。

相続税の節税効果だけでなく、「相続後に誰がその物件を管理するか」というオペレーション面も、事前に家族で話し合っておくことが大切です。

また、2026年4月現在、国税庁によるマンション評価見直しの効果検証が継続中です。今後の税制改正によって評価方法が変わる可能性もあるため、最新情報は税理士に確認されることをお勧めします。


まとめ:不動産投資の相続税対策、正直な結論

相続税対策としての不動産投資は「有効だが、万能ではない」というのが正直なところです。

  • 有効な点: 現金と比較して評価額を30〜44%圧縮できるケースがある
  • 注意点: 収益性を無視した物件選びは本末転倒。空室では効果が激減する
  • タワマン節税: 2024年改正で規制強化。ただし一般的な賃貸用物件の評価圧縮は今も有効

サラリーマンが「本業を辞めずに」資産形成をしていく中で、相続という視点を持つことは、長期的な不動産経営の質を上げてくれると感じています。

焦る必要はありません。でも、「まだ先の話」として後回しにしすぎると、選択肢が狭まることもある——そう思っています。

不動産投資を始める前の全体設計については、不動産投資初心者ガイドからスタートするのもおすすめです。

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